日立市にある株式会社樫村ふぁーむは、有機栽培(農薬・化学肥料不使用)で旬のものを中心に年間100品目以上の野菜を生産し、地元のスーパーや飲食店、個人会員等に販売しています。専務取締役であり、樫村ふぁーむの2代目でもある樫村智生さんに、有機栽培の取組や大切にしていること等をお話いただきました。

大切にしていること
樫村さんは、安全、安心は当たり前のことで、美味しくかつ環境にも優しいやり方で、この土地に根付いて息の長い農業を続けていくことを目指しています。
また、本当の意味で顔の見える関係を重視しており、SNSでの情報発信や、幼稚園・小中学校の農業体験などを通じた外との関わりをとても大切にしています。
2022年にオープンした農家直営カフェNico Kitchenも、樫村ふぁーむを知ってもらう・お客様とつながる場と考えているそうです。おかげで、営業活動をしなくても、紹介や口コミで販路や取り組みが広がっています。

2代目農家の挑戦
必死に有機農業を勉強する父の背中を見て、自分もその想いを受け継ぎたくなり、親元就農した樫村さん。樫村ふぁーむの代表は父親ですが、経営の大部分は樫村さんに任されています。そんな中で樫村さんは、樫村ふぁーむとして変えてはいけない部分を持ちつつも、変化を恐れずにいろいろなことに挑戦すること(不易流行)をモットーにしています。
その一方で、父親とぶつかることもしばしば。一番よくないのは、親の言いなりで鬱屈してしまうこと。譲れない部分、伝えてぶつかる部分は必要だし大切にした方がよいとおっしゃっていました。
土づくり
有機栽培でもうまく管理すれば、量もとれるし、品質も良いものができる、と力強く語ってくださった樫村さん。
土づくりでは、試行錯誤の末、しいたけの廃菌床、野菜残さ、もみ殻、米ぬか、コーヒーかす、落ち葉、麦芽かすといった、地域の廃棄物を利用して堆肥を作っています。こういった原料は地元の飲食店等から譲っていただいたもの。これも、地域とのつながりを大切にしている賜物です。
また、納豆菌・酵母菌・乳酸菌を混ぜた液肥も自作し、活用しているそうです。
農薬を使わない有機栽培では病害虫や雑草も問題となりますが、樫村さんは、太陽熱処理による殺菌・除草や、緑肥を活用したセンチュウ対策と土づくりに取り組んでいます。また、カルチで土を動かして除草すると同時に、土に酸素を入れて生育を促進することを意識しているそうです。

これからの有機農家へのメッセージ
最後に樫村さんから、これから有機農業に取り組む生産者へ伝えたいことを語っていただきました。
有機農業といっても、樫村ふぁーむのような多品目経営や、契約栽培中心でやっていく方法など、色々な方向性があります。自分がどのような農業をやりたいのかしっかり考えることが必要です。
また、ただ野菜を作りたいのか、それとも経営をやりたいのかも重要です。経営をやるということは全部自分でやるということで、ビジョンをしっかり持つことが大切です。
さらに、農業は1人ではできないので、仲間は広く作っておくこと。自分が営農する地域とつながっておくことも大事です。

おわりに
人とのつながりを大切にしながら、現状に甘んじることなく、常に進化を目指している樫村さん。その熱意に会場の参加者は大いに刺激を受けたようで、講演後も、樫村さんのもとに集まり意見を交わす人の姿が多数見られました。
